TOTOときどき宇宙

現状におきるすべてのことは、すべての存在が力を最大限に発揮した結果のところのものである。
さまざまなしがらみの中で力を発揮できないといったことや、さぼってしまうこと、失敗も含め、それが現状ある最大の力であるから、人にとって今という瞬間こそが、最大が続いた結果であるとも言える。


ここ2ヶ月ほど、サッカーくじであるTOTOを予想している。
9週間で500パターンほど、つまりは5万円ほど予想して3等が3回、miniの1等が1回当たったが、収支は若干マイナスである。

サッカーチームの監督は毎試合毎試合チームの力を最大化するために戦略をたてる。
グラウンドにいる11人はもちろん、控えの選手、ホームの環境、フォーメーション、対戦相手の戦略などに対し状況に応じて変化させながら、チームを勝利に導く。

そうして選手が最大限に力を発揮した結果を模索して臨んだ試合の結果が監督とチームの今ある最大の力であり、TOTOはそれをふまえ、勝負の行方を予想する。

先週は監督が不在のチームが2チームあり、当然のごとくそのチームは負けた。そのようなチャンスにあって、残りの11試合のうち3試合も予想を外す私の読みの浅さに落胆しているところだが、それもまた、現状ある私の最大の結果であるとも言える。

そのようにサッカーを観戦していたところ、私の中で一つの疑問がわいてきたので、今日はそのことを日記に書きたい。

選手がボールを蹴るとき腿の筋肉が伸縮し、力をその足に集中させる。
そのとき、選手の腿の細胞では、ATP(アデノシン三リン酸)が急速に、ADP(アデノシン二リン酸)とリンに分割される。
その分解で生じるエネルギーが、選手がボールを蹴るエネルギーとなる。
ボールに伝わったエネルギーはキーパーの胸で熱と位置エネルギーに変わり、ボールを蹴った選手の細胞内では再びADPとリンが結合し、その細胞内にエネルギーを蓄えることになる。
スタジアム内の空気からは酸素がわずかに減り、二酸化炭素がわずかに増えている。
だがその比率はすぐに元に戻る。
つまりは、地球環境内でエネルギーは恒常的に保たれている。
、監督の情熱も、観客の熱気も審判の発するホイッスルに使う呼気も、体にある糖をミトコンドリアが酸素や水素、窒素、炭素などの分子と結合したり分解したりしてできるエネルギーに使われ、それがまた空気中に発散されていく。
そのとき細胞内に生じる活性酸素が人体にとっては有害になる場合があるが、その話は別の機会にしたい。

そのような有機生命体が持つ仕組みは、地球の歴史とともに存在している。
地球上に生命が誕生してから38億年が経つが、最初は単純な分子の集まりであった原核細胞が、15億年前ほどになると、エネルギーを循環する真核細胞となる。
それは物質の営みの中で当然生じる帰結であるように感じられる。
さらにさかのぼり、今から138億年前、宇宙に生じたエネルギーから素粒子が誕生し水素原子をつくるまでの過程も当然に感じる。
その必然と呼ばれる連続が最大に続き、今この宇宙が存在し、我々も今、生きている。


さて、ここからが仮説であり本題である。

今ある宇宙は1400億年後には消滅すると言われている。
それは138億年前に起きたことでもある。
つまりは宇宙は、1400億年ほどで循環している。
毎回同じような最大の存在を繰り返し、ほとんど変わらぬ結果となっている。
では、宇宙はなぜ同じことを繰り返し繰り返し反復しているのだろうか。

選手がボールを足でインパクトした瞬間、私はその欠片のようなものをわずかに見たような気がしたのである。
1400億年前、ボールはやはりゴールのネットを揺らすことはなかった。
そのインパクトはもう少し弱く、キーパーは軽々とボールを抱えこんだ。
だが今回、キーパーが確保したボールはわずかに浮いていたことの違和感を感じ、私の中で一つの仮説を生じさせた。
わずかに、ほんのわずかだが、宇宙は以前と変わっている。
思い出す。選手の名が一文字変わっていることを。
思い出す。芝生の生える位置が数メートル変わっていることを。
そんなことが宇宙の進化にとって影響するのだろうか。
私にそれはわからない。
わからないが、宇宙はそれをわずかに期待しているということを、私は感じずにはいられない。

予定調和的に誕生し、予定調和的に滅する宇宙にあって、宇宙はどうやら変化を期待している。
広大な時間と空間を有する宇宙にあって、地球に存在する人間という生命は小さな小さな存在である。
それでも宇宙は、小さな人間という一つの存在に、何かを期待している。
実存と呼べば良いのか、奇跡と呼べばいいのか、単に努力と言っても良いのかもしれない。
現状という最大の結果から、わずかに飛び込えること。

1人の人間の些細な努力。それは誰にもわからないことであることもある。
1400年前には出来なかったけど、今回は勇気をもって誰かに話かける。
1400億年前には落ちたままになっていた路上の小石を広い、道路の隅に運ぶ。

そんな些細なことが、宇宙をわずかに進化させている。

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純文学作家(自称)