人に必要なもの

人間が生きていくのに必要なものは、まず、空気である。
空気の中でも、特に酸素が重要である。
細胞の中にあるミトコンドリアが酸素からネルギーを作ってくれなければ人間は、10分と生きていけない。

他に必要なのは、熱である。
 人間は、というよりそもそも熱のない−273.15℃で原子は活動を停止させるが、そのような場では当然、人間は生きていけない。

さらに必要なのは、重力など、宇宙にある4つの力である。引力がなければ我々はすぐに宇宙空間をはてしなくさまようこととなる。細胞同士の結合も弱く、ばらばらになってしまうだろう。そもそもすべての素粒子が形を保てない。

空間というのも必要である。エネルギーがポテンシャルとして保てる場があるからこそ、人間はその場所に存在できる。

時間。これがなければ人間は思考の止まったある瞬間の中に縛られ続けることになる。

そのように人間に必要なものをあげていけばきりがないが、そのような物理的なものに感謝を感じることもまた、大切だと感じている。

138億年前にこの宇宙が今の姿となったとき、なぜこの宇宙は、今ある宇宙の形を選んだのだろうか。
はじめにエネルギーの渦があり、爆発する。
爆発から数秒後に、エネルギーの圧縮の中から素粒子という物質と、反素粒子という反物質が誕生し、対消滅の結果、わずかに物質が残ることとなった。
その結果、この宇宙は今ある物理法則の世界となった。
素粒子は陽子となり水素となり、さまざまな原子となった。 
あらゆる物質はもともと爆発の中のエネルギーであり、やがて物質は、素粒子の存在期限が終了し消滅していく。
残った素粒子も巨大に膨れあがったブラックホールにのみ込まれ、そのブラックホールも、宇宙の膨張に抗えず、活動することをやめる。
宇宙は1400億年後、大きな眠りにつく。


物質というのは脆く、宇宙というのもまた、儚い。
どこかに、物質ではない宇宙があるだろう。
どこかに、想像もつかないような宇宙があるだろう。

それでも私は、今の宇宙がこの物質の世界を選んでくれたことを嬉しく思う。
私は、私と同じ宇宙に誕生した他の物質に触れることができる。
私は、私と同じ宇宙に誕生した他の物質と同じ空間に存在することができる。
私は、私と同じ宇宙に誕生した他の物質と同じ時間を生きることができる。

宇宙に、ありがとう。

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純文学作家(自称)