アヒルの冒険

ある日、アヒルは友達に質問をしました。
『永遠ってあるの?』
その友達はまた、別の友達に質問しました。
『永遠ってあるのかな?』
その友達はまた、別の友達に尋ねました。
『永遠って知ってる?』
そうして一羽のアヒルから始まった『永遠』を求める質問は、長い長い年月を越えて、繰り返されるようになりました・・・


あるところに、一羽のアヒルが住んでいました。
そのアヒルは、将来白鳥になるアヒルでも、愛らしいネズミと仲良くなって、世界中から愛されるようになるアヒルでもなく、普通のアヒルでした。

アヒルは世界中を旅していました。
アヒルにとって、世界は不思議で満ちていました。
人間に出会うと、自分の知らない世界のことを聞きたくて、たくさんの質問をしました。

ある日、アヒルはアジアの大陸を旅していました。
そこで出会った中国人に、中国語で尋ねました。
『什么是永恒?』(永遠って何?)
彼は言いました。
「天長地久。天地所以能長且久者、以其不自生、故能長生。」(天は永遠であり、地も永遠である。天地がその様に永久であるのは、自ら永久であろうとする意志が無いからである)
アヒルはわかったようなわからないような気分になり、お礼を言って、再び旅をはじめました。

あるとき、アヒルはインドにいました。
そこで、たくさんの人々に尊敬されている一人の人間に会いました。
アヒルは彼に、ヒンディー語で尋ねました。
『अनंत काल क्या है?』(永遠とは何でしょうか?)
彼は言いました。
『सब कुछ खाली है।
आकाश शाश्वत है, और हमेशा के लिए खाली भी है।』(すべては空である。空は永遠であり、永遠もまた空である。)
アヒルはますます永遠がわからなくなりましたが、お礼を言って、再び旅を続けました。

アヒルはある日、ローマにいました。
一人の男が罪人として捕らわれていました。
アヒルは彼の足元に行き、ラテン語で尋ねました。
『Ubi est aeternum?』(永遠はどこにありますか?)
彼は確かに言いました。
『Dei. Vita aeterna.
Ego resurrexerit.』
(神よ。永遠の命よ。
私は復活する)
アヒルには何だか分かりませんでしたが、やはりお礼を言って、そこを去りました。

アヒルは長い長い時間を旅していました。
東に何でも知っていると言われる聖人がいると聞けば、行って話を聞き、西に素晴らしい科学者がいると知れば、行って話を聞かせて貰いました。
アヒルの旅は100年がたち、1000年がたち、気がつくと2000年以上の年月が経過していました。
それでもアヒルの探していた答えは、見つかりませんでした。
アヒルはもう、諦めかけていました。
どんな立派な聖人も、神様のような人でも、アヒルの求める永遠の答えは、持っていないと思ったのです。
そして、この世界には永遠は存在しないと思うようになったのです。

ある日、アヒルは東洋の東の島にいました。
そこでアヒルは毎日、湖を眺めて過ごしていました。
ずっとずっと昔に、アヒルがこの世界に来る前に住んでいたところも、綺麗な湖がある場所でした。
そのことを思い出しながら、アヒルは、明日になったら元の世界に帰ろうと思いました。
アヒルの目からは一粒の涙がこぼれ落ちました。
湖には、陽が沈みかけていました。
『永遠よ。本当にあるなら教えて下さい』
アヒルは祈るように言いました。
すると、驚いたことに湖の中から、美しい女神が姿を現しました。
『私を呼びましたか?』女神が言いました。
アヒルはびっくりして『あなたは誰ですか?』
そう尋ねると、女神は優しい顔をして答えました。
『永遠です』

アヒルはすべてを理解し、美しい女神と一緒に湖に帰っていきました。

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純文学作家(自称)