仕事が終わり、徹夜明けに繁華街を1人歩く。
いつも聞いてる笑い声が聞こえて振り返る。変わらぬ笑顔がそこにある。
だけど横にいる男は見知らぬ男。
どちらとなく目そらす。
しっかり重なった右手を確認し、わたしは早足で先をいく。
秋の朝、さようならと一つ心で呟いて、私は身を退く。
仕事のプロジェクトを完遂し、歓喜の中でも心はどこか冷めている。酒に酒を重ねた末に行き倒れ、秋雨に濡れた身体は以前のようには回復しない。
秋の昼、魂が一つ咳をし風邪を引く。
傷ついた心と身体をベッドの上で休めながら、無心になろうと夢中になる。
消しては浮かび、消しては重なる残像に疲れ果て、無我でやれる作業を探しだす。
秋の夜、大地の匂いに包まれながら一杯のコーヒーを求めて豆を碾く。
わずかにおさまった心から、わずかに何かを求める力が湧いてくる。
形にならない衝動が重なり、私の腕を持ち上げる。
秋の明星、欠けた心を埋めるように、失き王女のためにパヴァーヌを一曲弾く。
祭多まつりのWEB SITE
純文学作家(自称)
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