みどりいろのトラ

「みどりいろのトラ」という絵本がある。
アリス館牧新社という出版社が、1975年に出版した本である。
4歳のときに近所の図書館でその本と出会い、大げさかもしれないが、私は魂を救われたのである。
その絵本に登場するのは一頭のみどりいろをしたトラだけである。
なぜトラはみどりいろなのか。
オスなのか、メスなのか、仲間や家族はいないのか、といったことへの説明はいっさいない。
透明の球体からでてきたトラが、荘厳な宮殿を四つ脚で闊歩し、また玉の中へ帰っていく。
その間に言葉は一語もでてこない。
なんという世界があることかと、震えるような衝撃を受けたことを覚えている。

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純文学作家(自称)