夏に、さらわれる

穏やかに波がなびいている。
砂浜に描いたあなたの顔が笑っている。
だが、やがて時がくる。
夏の朝、砂に描いたあなたの笑顔が、波にさらわれる。


太陽がじりじりと僕の皮膚を焦がすように黒くする。
僕の中でも黒い何かが燃えている。
あなたは僕から去っていった。
夏の昼、あなたが別の男に、さらわれる。

考えごとをしていた。
女のことではない。
たいてい湿っぽい日記を書いているが、ほとんどは習作をかねた妄想だ。
残り二ヶ月で100枚。
そろそろペースをあげないと間に合わない。
そんなことを考えながら、洗いものをしていた。
強く握りすぎたのか、皿は僕の手から滑っていった。
夏の夜、僕の手から離れて、皿割れる。

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純文学作家(自称)