20代前半の頃、酒を毎日浴びるように飲んでいた時期がある。
出る尿は真っ赤に染まっていた。
酒に溺れたのは現実を忘れるためではなく、現実を味わいたかったためだ。
そんな日々に出会った女がいた。
2、3歳下だったと思うが正解な年齢は分からず、
名前も偽名だったと思う。
由来は忘れたが、私はまゆこと呼んでいた。
たまに会うと二人で吐くまで酒を飲んだ。
ある日池袋で飲んだ帰り道、ガード下でギターの流しをしている青年と仲良くなった(酔っ払らった俺と彼女が青年にギターを弾いてもらい叫んでいただげだが)。
深夜になり迎えにきた青年の彼女と合流し、その青年のアパートに泊まらせて貰った。
アパートに風呂場はなく、トイレは共同だった。
画家を目指しているという彼女の油絵が、部屋の大半を占めていた。
夜の記憶はない。
朝起きて、写生しに出かけるという彼女とともに、私達は部屋をでた。
またね、と軽く挨拶をして、青年の彼女とも別れた。
我われも帰ろうと駅に向かう途中で、まゆこがポケットから、一体の仏像を取り出した。
部屋にあったから・・・
という。
まゆこには盗み癖があった。
仕方ないので、仏像をとり、青年のアパートに戻り部屋のポストにいれてきた。
当時、まゆことは付き合っていたわけではなく、身体の関係はない。
正直にいうと、一度もとうとしたが、私の部分が機能しなくてしなかった。
裸になりまゆこを抱きしめていると、自分とうりふたつの魂を抱きしめている、そんな気分だった。
あの頃を思い出すと、何故かはわからないが、何かに懺悔したくなる。
まゆこにでもなく、出会った青年にでも、その彼女にでも、もちろん自分にでもない。
しいていうなら、私は天にむかってあやまりたい。
祭多まつりのWEB SITE
純文学作家(自称)
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