催涙雨

いつからか、七夕の夜に降る雨を催涙雨と呼ぶようになった。
会えない二人が互いを思って流す涙と言われたり、会った二人が別れを惜しんで流す涙とも言われている。

日本には様々な雨が降る。
春時雨は晴れたと思ったら降り、降りだしたと思ったら止むような定まらない雨をいい、小糠雨は春先にしとしと降る霧雨をいう。

桜の花にかかる雨は桜雨になり、桜の時期に降る雨は花時雨と呼ばれる。

春霖は春の長雨を指し、菜種梅雨は春先に西の地域で天気が崩れたときにいう。

春雨は地雨のようなしっとりした雨に使い、虎が雨は仇討ちで討ち死にした恋人を悲しむような雨を指す。

入梅や栗花落、堕栗花は梅雨入りを指し、五月雨もまた、梅雨の雨をいう。

走り梅雨、迎え梅雨もまた梅雨の雨で、送り梅雨で梅雨が開ける。

男梅雨は梅雨のどしゃ降りだったり降らない雨を言い、女梅雨はしとしとと降り続く。

翠雨は青葉をつややかに見せる雨で、瑞雨、穀雨、甘雨は夏の穀物や草木を潤す恵みの雨となる。

喜雨は夏の日照りの中の喜びの雨をいい、白雨は夏の夕方に降る激しい雨となる。

洗車雨は七夕の前日の7月6日に降る雨をいい、御山洗は富士閉山の旧暦7月26日に降る雨を特別に言う。

半夏雨は夏至から11日目の半夏生に降る雨で、秋雨や秋霖は8月下旬から10月にかけての長雨を言う。

山茶花梅雨は11月下旬から12月に降る雨で、時雨は晩秋の勢いよく降った後でからっと晴れる雨を指す。

寒雨は冬の冷たい雨をいい、氷雨はさらに氷の粒が混じった冷たい雨を言う。

凍雨は氷が雨のように降る様をいい、寒九の雨は豊年万作の兆しといわれている。

村時雨はひとしきり強く降り、片時雨は空の片側だけに降る冬の雨を現す。

横時雨は横殴りに降る時雨のことで、豪雨は激しく大量に降る雨をいう。

驟雨は急に降り出す雨を指し
村雨は短時間で集中して激しく雨が降ることをいう。

宿雨は連日降り続ける雨で、長雨もまた、長い時間降ったりやんだりする雨をいう。

地雨は数日しとしとと降り続ける雨で、肘笠雨は急に降り出した雨をいう。

天泣は空に雲が無いのに雨が降ることを言い、篠突く雨は篠竹を束ねたものが落ちてくるような激しい雨を指す。


思えば、日本は雨が多い。
だから僕は短冊に、一年中晴れでありますようにと書こうとして、筆を止めた。
そうではない。
僕にもあなたにも誰の上にも雨は降る。
もし誰かが催涙雨を流すなら、僕が涙を拭えばいい。
だから短冊の願いはこう書いた。

「あなたの願いが叶いますように」

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純文学作家(自称)