色々

光の速度を一定とする特殊相対性理論では、重力に比例して時間の進むスピードが遅くなると言われている。
ゆえに、超高密度で構成される光すら脱出を免れないブラックホールの中では、時は止まったままで、光線の反射で生じる色というものも生まれない無色の世界である。
人は死んだらきっとそのような無色になるのではないか。それは私の願いでもある。

さて、色とは不思議なもので、実は、というほどのことでもないが、目に見える色というのは物そのものの色を表しているわけではない。
例えばここに一個の赤い色をした林檎がある。
だがこれは、人間に赤く見えるだけであって、林檎が赤いわけではない。
林檎の皮はさまざまな光りの波長の中からある波長を吸収し、特定の波長を反射させている。
その反射した波長が、人間には赤く見えるというだけである。
目で見る世界というのは指向性の矢が的を目指すように対象にスポットが当たっている状態だが、そこで認識できるのは、物そのものではなく、光りの結果生じた応答を我々は認知している。
音、形、匂いなど、人間が通常ものを認識する方法ではものそのものという客観にはたどり着けない。
人間にできるのはせいぜいこの林檎は赤いよね?とか美味しそうだね、とか林檎が好きといった主観の認識の一致を推し広げていくことだけである。
永遠に到達できないという絶望のふちから、我々は世界を再び構築していくのである。

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純文学作家(自称)