名のない感情

小さい頃は自分の中で湧き上がる感情を処理できず、堰を切ったように泣いては親を困らせていた。
学校に行き、沢山の言葉と出会い成長していく中で、知らない言葉が減っていくと同時に泣くことはなくなっていった。
体が成長するにつれ、時には同級生と殴り合いをしてみたり、小さな恋に心を踊らせてみたりしたけれど、謝罪の言葉や恋の言葉を不器用に使ううちに時は流れていった。
けれどもほんとは何も変わっていないことを知っている。
しこりのように心に残る感情の名前は辞書にはなく、ときどき私は言葉を失う。
私の中の名のない感情は、きっと何かを求めていて、誰かに名付けられのを待っている。

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純文学作家(自称)