人生100年時代について

『人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり 一度生を享け、滅せぬもののあるべきか』

天正10年6月2日(1582年6月21日)、織田信長が本能寺で「敦盛の舞」を舞ったのは49歳のときであった。
元暦元年2月7日(1184年3月20日)、その敦盛が一ノ谷の戦いで熊谷直実に首を取られたのは17歳のときである。

ときは移り、今日は令和元年6月10日(2019年6月10日)である。
そう、昨日はドナルドダックの誕生日であった。
私もアンクルスクルージや3つ子のアヒルと一緒にお祝いしたが、

その話はおいといて、先日政府により、人生100年時代にあって、年金制度が破綻とまでは言わないまでも、事実上欠落していることが正式に認められた。
これは30年以上前から言われていたことで、今更驚くことではない。
年金機構は140兆円の資金があり、これを株式投資で運用している。
毎年この運用について、5兆円の損失、10兆円の損失、14兆円の損失と報道される度に、怒りを通りこし、哀れみを越え、笑えてくるから不思議である。

実は、実際の運用成績は、累計56兆円ほどのプラスとなっていて、それでも国民全体の生活を保証できるほどではないと、簡単に言えば政府は国民を煽(あお)っているのである。

政府が公表した内容によると、95歳まで生きると仮定して、年金の受給開始から死亡するまでに、世帯で2000万円が追加で必要と試算されている。

至極あたり前のことであるが、人は自分で生きる術を身につけなければならない。
その、『生きる』ということについて、多くの人は時代の精神や、自分より大きな存在と思われるもの、例えば国や組織などの動向に影響されて生きている。

若いときはことさら、この他者からの影響度合いが強い。
親にはじまり、学校、地域社会、バイト先の関係、会社、組織、国、国際社会、太陽系、天の川銀河、おとめ座超銀河団と、人はずっと何かしらに干渉を受け、存在している。

本来、実存として人間は何ものからも自由である。
だから、銀河系人である前に、地球人である前に、日本国民である前に、我々は一つの自由な意思である。

だが、生活というものを、自認する大きな存在に依存している場合、その依存から自由になることは容易でない。

現実的には、お金というものから自由でいるためには、ある程度、お金を持っていた方が良く、男は抑えられない性欲に突き動される前に、性欲を発散させてしまった方が良く、人間関係が煩わしい場合は、適度に接するのが無難である。ようするに、中道を歩くということである。
折しも、苦しみの源は無知からくると、ダライ・ラマが本日Twitterで呟いていた。

ということで、前置きが長くなったが、政府のいう2000万円を貯蓄する方法を考えてみたい。
まず、政府が半ば他人事として提案しているのは、NISAやiDeCoである。
これは各自で調べて欲しいが、ようするに、国は制度の外形は作るが、福祉の中身や生活の中身までは責任は持てず、生活の要となる資産運用を各自でしましょう、ということである。
この政府の方針は、戦前からずっと同じである。
現在、株式譲渡益に係る申告分離課税は約20%である。
配当金には、それにプラスで総合課税が15%~55%が上乗せされる。 
つまりは、資産を資産として持ち続けることを良しとせず、流動せよと言っているのである。
なぜか。
みんながジャブジャブとお金を右に左に流した方が、信用創造が生まれ、経済的に潤うからである。
そして、個人ではジャブジャブするのが難しいので、積み立てNISAやiDeCoで容易に引き出せなくし、集まった資金を専門家がジャブジャブ使うことにしたのである。

根底には、人間に対する一つの考えがある。
金も人も、動くことが正解であるとする考えである。
国も企業も、人が今に満たされてその場にとどまることを良しとしない。
だがら、煽り、挑発する。欲望を刺激する。

本来人間は、一呼吸一呼吸に感謝を抱き、今この瞬間に満たされて生きていける。
人は何もせず、幸福になれる。

だが、それでは会社や国は存在できない。
会社や国に依存する者も、とまっては生きていけないと思い込んでいる。

その大きな流れは今後も変わらないため、それを意識しながら流れのままに生きるのが、現実的な生存方法だとも言える。

まわりくどい説明を繰り返し、2000万円貯める話ができなった。
知っていたらとっくに貯めているとも考えられるが(笑)、何はともあれ、金があろうかなかろうか、人間はいつか死ぬ。

死が目前にある中で、織田信長のように舞えるだろうか。
敦盛のように潔く、自身の首を差し出せるだろうか。

金はなくても、死ぬ間際には、粋だけを持っていたいと考える今日この頃である。

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