穀雨に

気がつくと、空に雨が降っていた。

気がつくと、心に雨が降っていた。

いつのまにか、季節は穀雨を迎えている。

自然に逆らわず、水の流れる如く生きたいと願いながら、ときどき人は、鯉が滝を昇るが如く流れに逆らう。
それはそれで、美しいとも思う。
時代の流れや自らの運命を越えて、水面を跳ねることもある。
その結果、滝にのまれることになっても、鯉はきっと、満足するだろう。


優しい言葉をかければ、
信頼が生まれる。
相手の身になって考えれば、
結びつきが生まれる。
相手の身になって与えれば、
愛が芽生える。

紀元前6世紀に、老子はそう書き残している。

穀雨という季節に、雨が降る。

会いたい気持ちに、雨が降る。

鯉はいつか、水の流れの中で気づくだろう。

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純文学作家(自称)