日常

微睡みの中で蒲団から手を伸ばし、枕の先にある置き時計を指で掴む。
薄目を開くと目の焦点が数字を認識する。
635。
時計を元の位置に戻し、毛布を頭から被る。
もう眠りには落ちれないだろうと思いながら、残された時間に何かが起きることを僅かに期待している。
何かーーそれを言葉で表現することは難しい。
意識はまだ半分夢の中にあり、夢から覚めた半分で、白昼夢に見るような妄想を頭に浮かべている。
脈絡のない出来事や言葉が次々に沸いては消えていく。
いっそのこと蒲団からでて着替えを始めればいいと思うが、身体に疲れはないのに、起き上がることを酷く億劫に感じている。
もう一度時計を見る。
6:40。
目覚ましが鳴る10分前である。
時計の横のスマートフォンを手にとり、ロックを解除する。
もう一度毛布を深くかぶり、暗闇のなかでスマートフォンの明かりを灯す。
コミュニケーションアプリを開き、メッセージが1件もないことを確認する。
携帯キャリアのメールアプリを開き、受信トレイに届いたメールのタイトルを眺めたあとで、すべて削除を選択する。
スマートフォンの右上の数値に目をやる。
6:42。
通知トレイで点滅しているFのマークを開くと、株式予想のアプリが起動する。
2、3の記事を読み、アプリを閉じる。
6:44。
もう一度、目を閉じる。
頭はすでに、覚めてしまっている。
それでもやはり、何かを期待しながら、起き上がりもせずに、蒲団の中でじっとしている。
今は6時46分ぐらいだろうか。
両手を腹の前に持っていき指を交差する。
しばらくそうしてみるが、違和感を感じ、両手を身体の両側に持っていく。
左肩を下にして、半身に身体の位置を変える。
時計が目に入る。
6時48分。
何かへの抵抗を試みるため、呼吸を整え無心になろうとするが、雑念が浮かんでくる。
目を開き、フリーのメールを開く。
ホームページからのメールが1件届いている。
『⚪⚪があなたをフォローしています』
奇特な人がいるものだと思いながら、サイトにアクセスし、2年ぶりの新規フォロワーのページを開く。
傷み、のような甘美な詩が掲載されている。
次のページを開こうとしたところで、目覚ましのアラームが鳴り響いた。

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純文学作家(自称)