『無量義経』の現代語訳に【無量義とは一法より生ず。その一法とは即ち無相也。】という言葉が出てくる。
『無量義経』は偽経(お釈迦様の直接の教えではない)と言われることもあるが、一法を知れば偽も正もなく無相という実相が立ち現れてくるという仕掛けに、面白味を感じるとともに救われる思いでもある。
言葉もまた、誰がどの場面で発したといった相対とは独立し、言葉そのものが実相として受けとれるからである。
さて、今年も雑誌『フォーブス』により世界長者番付の発表が先週(3/5)にあった。
上位を見てみよう。なお円は1ドル=111円(3/14現在。端数は切り捨て)の価格で計算している。
1位は昨年に続きAmazonの創業者ジェフ・ベゾス(55)で資産額は1310億ドル(約14兆5400億円)であった。
2位はビル・ゲイツ(63)で、資産額は965億ドル(約10兆7100億円)。
3位は投資家ウォーレン・バフェット(88)で825億ドル(約9兆1600億円)である。
ちなみに日本人の最高位は41位のユニクロ柳井正(70)で資産は222億ドル(2兆4600億円)であった。
そのような世界の資産家に対し、我々はどのような考えを持つだろうか。
ある事柄に対し(どんな事柄であれ)、人間はいくつかのパターン化された反応を示す。
それは、その事柄に対し同調するパターンと、その事柄を増幅させるパターンと、その事柄に相対するパターンと、その事柄に何も感じないパターンに分類される。
それは人間の持つ感情パターンとも同じである。
最近私が関心を持っている「毒親」や「洗脳」では、同調パターン(共感)が利用され問題となる。
本人にはもともとない経験や感情でも、共感パターンにより共振させられると、本当にあった感情として本人に立ち上がらせることができる。
悪意は伝染するのである。
反対に、例えば愛する人と身体を重ねると、幸福の感情と共に、最初は別々に脈打つ鼓動が、不思議と同じリズムで鼓動するようになることがある。
鼓動もまた同調するのである。
脳というのがその周波数で身体を制御し、ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリン・セロトニン・メラトニン・アセチルコリン・エンドルフィンといった脳内物質を発し、人間の感情を生じさせていることを考えると、人間は波であるとも言える。
何に共振(共感)し、何に反振するのか。それが人の生活 に深く関わってくる。
幸福の一つの条件は、心の振動を自ら選択したものによって生じさせることである。
言いたいことが言えない、やりたいことかできないといった心が望む振動を生じさせられないと、心が望まない振動を繰り返し、望まない感情を生むこととなる。
まずは、言いたいことを言う、それが自由な人間の基礎である。
そうはいっても、現代社会ではなかなか他者の共振からは自由でいられない。
目にする言葉や広告、他者の眼差しが、あなたに共振を求めてくる。
それにはどう対処したら良いだろうか。
『無量義経』の次に開いた『妙法蓮華経』に面白いことがが書かれていた。
この世とは方便であると。
つまりは、この地球や社会というシステムの中では、実相にこだわらず、なるように生きれば、すなわちそれが答えであると。
一周回って同じところに着地したような感じだが、それで救われる人は最初の『一法とは即ち無相也。』ですでに救われている。
だからこそ方便が必要なのである。
というわけで、方便をいくつか記載する。
先ほど紹介した長者番付で3位であったウォーレン・バフェットに習えば、彼ほどではないにしても投資によりお金を生むことができる。
彼の教師であったベンジャミン・グレアムの書『賢明なる投資家』は投資の古典であるとともに、財を成すことの基本書でもある。
財務分析から最も合理的に投資することで、バフェットは年利21%以上を50年に渡り稼いでいる。
もちろん我々は自らの手で彼のように上手くはやれず、またそんな時間もない。
そのためにプロがいる。
月利2%。彼が薦めるようにそれぐらいのインデックスファンドはよくある。
例えば再投資型の積み立てNISAで毎月3000円を20年継続して積み立てると、途中から年率最大20%の税金がかかっても1500万円ほどの資産となる。
今25歳であれば、45歳のときにはある程度まとまった資産ができるわけである。
今0歳の子どもがいれば、その子のために20年間積み立てをする。するとその子が成人するときに1000万円を越える資産ができている。
給与所得では毎年だいたい50%ほどが税や保険として徴収されるのに対し、NISAは基本無税なのである。
そのことに文句を響かせても仕方ない。
なにはともわれ、合理的に財を成すというのは時間がかかるものである。
次の方便に移ろう。
人間は群れをなす動物である。
猿もチンパンジーも群れをなす。
霊長類で群れを作らないのはオランウータンだけである。
ちなみにオランウータン関連の書物では久世濃子の『オランウータン』が面白いという。
と、そんな方便ではなくて、人間は群れて何をしているのかというと、コミュニティを作り、分業しているのである。
親族、会社、サークル、サロン、ギルド、地域社会など、人が属するコミュニティは多種あるが、どこのコミュニティに属するかが人生を左右するほどに大事になっている。
なぜならそれが同調の振動となるからである。
かつて私は無政府系のコミュニティに憧れをもっていた。
作家、武者小路実篤などが設立した「新しき村」やサン=シモンなどに理想をみていた。
「新しき村」は1918年から100年が経過しまだ存続しているが、住民の数はだいぶ減ってしまっている。
1世代だけでなく、コミュニティというシステムを何世代にも渡り継続させるのは難しいようである。
最近は人類が手にした分業という果実を手離すようなコミュニティも試験されている。
みなで農業し、みなで収穫し、みなで子育てをする。結果はやがて分かるであろう。
陰謀論が好きなコミュニティも多々ある。
いわく、世界は1744年に誕生したマイアー・ロートシルトから続くロスチャイルド家やその上が牛耳っているなどと。
それは世界や人間を、数年というフローで見るために生じる誤診である。
世界で一番古い企業というのは日本の大阪にある。
西暦578年創業の金剛組という建設会社である。
世界最古の宿泊施設もまた、日本にある。
705年創業の山梨にある「慶雲館」や、石川にある「法師」である。
そのような時代から、それらの企業やコミュニティは世界の金融屋に支配されていただろうか。
もちろん否である。
ずっとずっと昔、あなたのご先祖さまは大地に種をまき、収穫し、食し、笑い、寝て、起き、何かに共振し、子を育て、そのような日常を生きていた。
それを数万年繰り返し、今、あなたが生きている。
では、今あなたは何かの陰謀のために生じているだろうか。
もちろん否である。
ビル・ゲイツやバフェット、フェイスブックを誕生させたマーク・ザッカーバーグなどは、ギビング・プレッジと称して、生前または死後に自己の資産の50%以上を慈善事業に寄付することを公約している。
そのようなお金が世界に回れば、餓えや貧困はやがて世界からなくなるだろう。
2015年の国連サミットで採択されたSDGsでは、接続可能な開発のための2030アジェンダとして、17のゴール、169のターゲット、244の指標が公表された。
発展途上国は今後、最低年率7%の経済成長を達成するということも明記されている。
これは国連の威信にかけても実行されるだろう。
世界経済フォーラム(ダボス会議)やニューエコノミーフォーラムも似たような動向である。
グローバル化の影響というのは今後も世界を侵食していく。
そんな世界にあって、あなたは何に共振していくべきだろうか。
答えはあなた自身があなたで選択することである。
ダボス会議に出席するような財界人になりたいのなら、それを目指すのも良い。
家族というコミュニティを大切に生きるのも良い。
仲間を求め、新しいコミュニティを作るのも良い。
共感、増幅、反感、無関心が複雑に絡む精神の営みの中で、あなたが納得するものもあなた自身が選択していくこと。
その場の雰囲気、気分に流されないこと。
嫌なことはその場でNOと言えること。
最初に書いたように、人の感情というのは外から容易に変容できてしまう。
だから尚更、一過性のフローとしての事象に、心を奪われてしまわないことが大切である。
それがあなたがあなたという一筋につながる道である。
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純文学作家(自称)
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