桜桃忌に寄せて

6月も中旬が過ぎ、紫陽花が庭に色づく季節となった。
この時期はなぜか落ち着かない。
心を静めるために仕事を半日休み、物思いにふけっている。

文学をする者にとって、今日は桜桃忌という特別な1日である。
1909年6月19日に彼は生まれ、1948年6月19日に彼の遺体は発見された。
38歳で彼はこの世を去った。

彼の遺書には「誰よりも愛してゐました」という言葉や「小説を書くのがいやになつたから死ぬのです」といった言葉がかかれている。
本当のことは知らない。
ただ、そうして大宰治は死んでいった。

やはり心が落ち着かない。
安らぎを求めてスマートフォンを開くと、さまざまな文字や写真が飛び込んでくる。
痛ましい事件に、震災。
暴力や人間の欲望に並んで、可愛いらしい投稿もある。
おそらく、正義というのは一つではない。
太宰が死んだことに、今日の私が何かをいっても仕方ないだろう。
程度の差はあれ、今日が誰にとっても、特別な1日であることには違いない。
広告に仏陀の言葉、誰かの不正を訴える投稿に、誇らしい笑顔をスクロールし、同じように私も、何かを投稿する。
明日もまた、誰かにとって特別な日がやってくる。
明後日も。

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純文学作家(自称)