主よ人の望みの喜びよ

電車で通勤中である。
耳にイヤホンをあてBWV147をリピートしている。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハは地上にありながら、天上の調べを地球にもたらした。
しかしそれは、地球にただ留まろうとする存在ではない。
音と音が絡みあい、二重らせんのように天に向かって伸び、上昇していく。
惜しみなく音が連なり、歓喜の羽根を落としていく。
二匹の金色の龍が互いの身体を絡めながら一つになり、大気圏をも越えていく、そんなイメージが浮かぶ。
だが、それはけっして荒々しいものではない。
天を突き抜け破るものではなく、天の頂きの手前で喜びを噛み締めるような何かの意思が働いている。
バッハはなぜこのような曲を生み出したのだろうか。
もちろんこれは教会カンタータである。
原題の『Jesus bleibet meine Freude』の意味はイエスは変わらざるわが喜び、である。
だが、18世紀に生まれたこの曲は、世紀と宗教を越え、今も、今この瞬間も、世界の人々に喜びを与えている。

0コメント

  • 1000 / 1000

祭多まつりのWEB SITE

純文学作家(自称)