鏡花水月

『本当に大切なものは目に見えないんだよ』と、幼少の頃に教えてくれたのはサンテグジュペリの書いた「星の王子さま」であり『鏡花水月』という言葉の通り、大切なものの儚さを、大人になると経験を通して誰もが知る。
時間というものが可逆的であるか否かは、今のところ誰にも分かっていないが、少なくとも現在、失われた時間や失くした大切なものを過去に戻って取り戻せた人は有史以来存在していない。
だから我々は『今を生きる』。

今この瞬間は、二度とない。
今対面しているこの人は、二度と会うことがないかもしれない。
今存在しているこの空間は二度と存在しない。
今対峙しているこの場面は二度と現れない。
今生きている私は二度と生きかえらない。

儚い時間の中で、儚い私が水面に映った月を見る。
この月もまた、二度とない。
それでももしこの瞬間、同じように儚さの中で月を見る人がいたらと思うと、それもまた、大切なことの一つである。

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純文学作家(自称)