蛇足

蛇に足を描いて勝負に負けてしまった絵かきを思い出す。
彼は蛇足の中に何をみたのだろうか。

人にとって言葉は不便であると常々思っている。
はじめに直感があり、快・不快を伴う感覚が生じ、やがて言葉が生まれる。
だから私は、直感を一番大事にしている。
だが、直感を言葉にしたとたん表現は様々な意匠を纏(まと)うことにより、本当に表現したいものとは違うものになってしまう。
蛇に足が生えたらもはや蛇ではなくなってしまうように。
それでも人は言葉を使わずにはいられない。
直感には遠く及ばないかもしれない。
言葉で間違いをおかすこともあるかもしれない。
それでもまずは誰かに言葉を届けること。
間違いは後で訂正できる。
だから恐れず、言葉を使う。
蛇足に翼も描いたら、それはきっと昇竜と呼ばれる。
私も直感で得たものに対し言葉に言葉を重ね、いつか飛べることを願っている。

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純文学作家(自称)