4日ばかり家に帰らず路上をさ迷っていると、土曜日の夕刻、久方ぶりに兄から連絡があった。
甥(兄の息子)の誕生日が日曜日だと言う。
渡りに舟とばかりに実家に帰る。
酒を頂き、飯を食らう。
湯船につかり、布団で眠る。
あたり前のことが胸にしみると同時に、こんな贅沢があっていいのだろうかとも思う。
今朝は早くから甥のプレゼントを買いにでかけた。
11歳の男の子が貰って喜ぶものとは何だろうか。
顔は無邪気な風でいて、自我が強くなり始めるのがこの頃のように思う。
私の11歳といえば、同級生にいるヤクザの息子に毎日殴られ、帰ったら4つ離れた兄貴に殴られる日々だったと記憶している。その中でブッダに出会った。懐かしい思い出である。
さて、11歳のプレゼントである。
甥は普段、モンハンやら妖怪ウォッチのゲームに夢中になっている。ならば新しいゲームがいいだろうか・・・
兄は私とは似ず、松潤風の2枚目で、その血が息子にも受け継がれている。
ゲームより異性に夢中になるのもそう遠くないように思う。
大人としてコンドームでも渡しておこうか・・・
私の11歳の誕生日は確か、その頃同級生の間で流行っていたサバイバルゲームで使用する空気銃だった。
赤羽にあった関東でも有数のガンショップの中で特別にピカピカに光ったトンプソンの銃を選んだのである。
甥にも銃を渡そうか。
しかしそれはちょっとだけ改造してある。
本物の銃と同じように劇鉄が火薬に火をつける。
だが、中に鉛の玉はない。
密封された銃身は、暴発し爆発を起こす・・・
本屋に入った。
ここには人類が築いてきたすべてがある。
かつて19歳で4人を殺害した強盗犯は、自らの罪は無知からきていると悟った。
私が11歳のあの日、弥勒菩薩がかかれた一冊の書物に出会った。
あれからずっとその本を探しているが見つからない。だが、確かに11歳の私を死なせず生かしてくれたのはその本だったのである・・・
私は一冊の本を手にとった。
宮沢賢治の銀河鉄道の夜。
賢治もまた、弥勒のように生きた人である。
甥が今読んでためになるかわからないが、人生につまづいた時にはきっと役に立つだろう。
そしていつか甥が私の書いた小説を読むようになったら面白いと思う。
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純文学作家(自称)
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