花散里に思い染めて

今年にはいりいくつかの約束を反故にされ、私もまた、いつくかの関係を無意識に、時には意識的に壊してきた。
人はみな、それぞれの事情の中で生きているゆえ致し方ないことだと思うようにしているが、なかなか脱却できない心情に、まだまだ自身の未熟さに呆れているところである。

さて、雨の降る夜に思い出す文学と言えば「雨夜の品定め」そう、源氏物語であろう。
源氏と関係した女で誰が一番良い人生を送ったかと問えば、やはり花散里の名があがる。
花散里と源氏がどれほどの情熱を持って逢瀬を重ねたかは分からないが、後々に源氏の息子の世話をしたり、源氏に頼まれてまったく関係ない子供の世話を惜しまずしたりと、人の良さでは天下一品である。
そして源氏が他の女の所にいこうとも文句一つ言わず、花散里は自分の時間を有意義に過ごし裁縫や染色などを趣味とし優れた才能を見せたりする。
そして花散里の最大の美徳は何かと言えば、心移ろうことのない誠実な人柄である。
源氏は花散里を信頼し、何でも相談するようになりやがて源氏が亡くなると二条東院を譲り受ける。
源氏は確かに愛情としては、紫の上を一番に思っていたが、源氏と誰よりもつながっていたのは花散里だと私は思っている。

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純文学作家(自称)